2023年9月23日 セミナー②「リフレーミングで自分らしい生き方のススメ」
環境が人を明るくする/戸倉蓉子さん
「リフレーミング」という言葉の意味を調べると、ネガティブな思想をポジティブに置き換えて、相手を思いやったり自分に自信が持てたりする考え方の癖を身に付けること―とあります。「年だから」を「この年だからできる」、「やったことがない」を「だから挑戦してみよう」、「失敗したらどうしよう」を「力試しだ」。こうした発想の転換を習慣化することで、自分らしく輝けるのではないでしょうか。
私は小学生の時にナイチンゲールの本を読んで感激し、看護学校に進みました。夢をかなえて慶應義塾大学病院に就職したものの、担当していた白血病の女の子は闘病が苦しく、なかなか笑ってくれませんでした。そんなある日、ベッドサイドに彼女が好きなガーベラの花を飾ってみると、初めて笑顔を見せてくれたのです。当時の病院は殺風景でしたが、環境が人の気持ちを明るくさせると実感し、病院の環境改善に取り組むために退職を決めました。
建築の道を目指して設計事務所に応募したものの、不採用の嵐。それでも前を見るしかないと思っていたところ、インテリアコーディネーター募集のポスターを見つけ、事務所に飛び込んで翌日から働きました。実際はリフォームから営業、現場監督までやる完全歩合制の営業職。辞めていく人もたくさんいましたが、私は諦めずに頑張りました。そうすると少しずつ大きな仕事ももらえるようになり、1991年に独立しました。
しかし仕事をしているうちに、自分には学びが足りないと痛感するようになったのです。そこでお金をためて35歳でイタリア・ミラノに渡り、建築大学で学びながら建築家のパオロ・ナーバさんに弟子入り。言葉には苦労しましたが、大きな夢があったのでくじけることはありませんでした。学んだことを生かして、豊かな住環境や病気にならない環境をつくろうと思い帰国し、設立したのが女性一級建築士だけの事務所です。
その後、人間ドックに特化した病院をプロデュースする機会に恵まれました。院内にカフェや映画館、温泉を作ったほか、「旅する病室」をコンセプトに、病室に世界のインテリアを織り交ぜました。しばらくすると、その病院がある高崎市の健康レベルが上がり、生活習慣病の罹患率が下がったのです。健康にいい病院があると、社会は変わると感じました。
最後に私なりのリフレーミングのポイントをお伝えします。一つ目は「一生かけて取り組めるテーマがあるか」。看護師でも建築家でも、人を元気にすることが私の使命だと思っています。次に「そこに向かう情熱があるか」。スペインの建築家アントニオ・ガウディは、生きているうちに絶対に完成しないサグラダ・ファミリアを設計しました。200年後でも誰かが引き継いでくれれば良いという思いで後世に残すものを考えたことは、格好良いと思います。
三つ目は「誰かのせいにしない生き方」。全ては自分の選択と腹をくくって行動したら、人生は動き出します。そして、自分を少し上の方から見てあげてください。人生が成功に向かうよう、自分を応援してあげることが大切です。
プロフィール
とくら・ようこ 福島県出身。看護師時代、「病院の環境を明るく変えたい」とインテリアの世界に飛び込み、イタリア・ミラノで世界的建築家パオロ・ナーバ氏に師事。40歳で一級建築士免許取得。現在は株式会社ドムスデザイン代表取締役を務める。